実態もないのに、お金で学位を発行するディプロマ・ミル(Diploma Mill : 証書工房)というのが以前から結構問題になっていて、学歴詐称の温床にもつながっているようですね。米国では州ごとに、「この教育機関から発行された学位記は無効です」といったリストも出されているようです。と、いうような事を調べていたら、件名のように「爵位」をネット通販している自称国家の「シーランド公国」を見つけました。成立経緯などを見ても非常に興味深いので、少しご紹介しましょう。
シーランド公国の実態は、第二次大戦中に英国の沖合いに作られた防空要塞です。英国東海岸の沖合いの比較的浅い海底に基礎を沈め、そこに円筒形の構築物二本を建築し、その上に甲板を渡したような構造をしています。実際には造船所で製造された後現場まで台船で曳航し、設置場所に沈められたと思われます。円筒形構築物の内部は7階層もあり、かつては駐屯兵の居住区や弾薬庫などに使用されていたようですね。
大戦中は数百名の兵士が駐屯し、英国本土を襲うドイツ軍の航空機に攻撃を仕掛けていましたが、戦争の終結とともに、やがて放置されてしまいました。ところが1967年9月2日に元英国陸軍少佐で海賊放送の運営者だったパディ・ロイ・ベーツが、英国放送法違反で訴えられたため、当時英国の領海外に存在したこの要塞に目をつけ独立宣言を発表、要塞を「シーランド」と名付け、自らロイ・ベーツ公と名乗ったそうです。
その後英国政府はベーツを強制的に立ち退かせようと裁判に訴えましたが、1968年11月25日に出された判決では、シーランドが英国から3海里の領海外(当時の基準)に存在し且つ英国を含めて周辺諸国が領有を主張していなかったことから、英国司法の管轄外とされ、英国司法の及ばない空白地帯となり、シーランドは独立を達成したと言うことになったようです。
シーランド公国の「領土」(パブリックドメイン写真)
その後、ドイツ人の「首相」によるクーデタなどを経ましたが、混乱はすぐに収まり、シーランド公国はまだ存在しています。もちろん世界中にこの国を承認する国家はありませんし、国際法上でも国家とするには問題が多い(そもそも陸地ではないし)ので、あくまでも「自称国家」です。しかも領土がわずか200㎡というバチカンよりも小さい世界最小の国家です。現在は老齢になったベーツ公はスペインに引退し、息子のベーツ公子が統治しているようです。シーランド公国は、元々の生業である海賊放送も続けているようですが、その他に硬貨(シーランド・ドル)を発行したり、切手を発行して販売したり、また件名のように爵位を発行したりして稼いでいます。
爵位はLord, Lady, Baron, Baronessから選べ(正確にはLordとLadyは爵位ではないのですが)、29.99ポンド(+郵送料4.99ポンド)でネットで申し込みが可能です決済はGoogleのシステムを利用しているようです。他にも切手セットなども販売しています。政府の公式ページのホームから→Shopで入って爵位を買うのも変なものですが...
履歴書や経歴に爵位を書く人はいないと思いますので、経歴詐称みたいな話しにはつながらないと思いますが、あくまでもお遊びですね。ちなみにシーランド公国外務省の住所は、
Bureau for External Affairs
SEALAND 1001
Sealand Post Bag
FELIXSTOWE IP11 9SZ
UNITED KINGDOM
っていうことで、英国内の私書箱ってところが笑えます。
シーランド公国公式ホームページ
シーランド公国政府ホームページ
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