2011年12月11日日曜日

江戸時代の文化と前句付け興行

<今日のツイートからすこし編集しなおして掲載しました>

西暦1800年の世界。人口百万人を超える都市はたった3個所でした。倫敦、北京と、そして江戸です。江戸の人口のうち、江戸定住者は約半分で、残りの半分は参勤交代 に伴って国許から出て来た武士や使用人たちでした。参勤交代は一年おきなので、凡そ100万人以上が国許と江戸を行ったり来たりしていたということになります。

江戸の文化や情報網は現代人が考えるより遥かに発達しており、しかも、厳密な身分制はあるものの、文化面での交流に関しては、武士もその他もあまり関係なく行われていたようです。

江戸で生まれ、発達した文化が、100万人の参勤交代随行員を通じて、全国に伝播します。それ以外にも、豊かな庶民は参拝やら、物見遊山やら、年貢の出納(名主が在府の領主に金納で持ってきたりもあったようです)やらで、各地を旅行をしていました。これほどダイナミックに人間が移動して、情報が伝播していた地域は、近世では他にはないのではないかと、思っています。

参勤交代で江戸詰になった侍も、そんなに忙しくはないので、空き時間には名所見物をしたり、江戸のグルメを楽しんだり。少ないこずかいをやりくりしつつ、楽しんでいたようです。この件に関しては、幕末の紀州藩士、酒井伴四郎という下級武士の記録が残っていて、江戸詰だった万延年間に詳細な日記とこずかい帳が残されています。この人は江戸詰めだったときには、紀州藩の中屋敷(いまの赤坂御用地)内の長屋に住んでいて、住居費は掛からず。また、紀州藩では江戸詰めの侍に手当を支給していたようなので、遊び歩くだけの資金もあったようです。

一方で、江戸中期、文化5年(1808年)には、江戸市中に656軒の貸本屋が存在したといいます。平均して1軒当たりの得意先が170軒ほど(得意先が商家とかであ ればそこには複数の読者が…)。すると、読者数としては、10万人を軽く超える。江戸の総人口が100万人である事を考えると大変な数。貸本屋が扱うのは、お上の検閲を受けた正規の書物の他にも、各種発禁本(艶本や幕府に批判的な書物や、海外事情などのいわゆる裏本ですかね)が含まれていたとか。

で、雑俳の話ですが、これが江戸時代には大変流行しました。有名な宗匠の中には、商品付き(宗匠が採点)興行を行うものもあり、前句付けなどで応募を募っ たようです。元禄期の引札(チラシ)によると、投句料八銭で、上位5名に奈良晒1反、その後は、徒然草の注釈書、小刀、風呂敷、墨などなど300位まで商品が提供されたそうです。

投句者は、各地の川柳取次ぎ所で応募しますが、その投句総数も、万句合せの言葉通り、一万を超える事もありました。投句者のほうも、大名、武士から地方の商人、農民、女性や子供まで貴賎にかかわらずといった感じです。

投句料が八銭(八文の事だと思われます)で、一万句集まると、八万文。一両が四貫文(4000文)と換算すると、総額は二十両て事になりますね。こういう興行を月に四回開催した宗匠(江戸の松月堂不角)もあったようですから、かなりのビジネスでもあります。

江戸文化というものが、階層的にも地域的にも極めて裾野の広い大衆文化であったものと思います。雑俳にとどまらず、他の文学、絵画や音楽、はては科学技術においても。それが、現代にも通じている。決して他国には例を見ないものと思われます。

近況とご挨拶

このところTwitterばかりで、Blogのほうが更新されていませんね、いけません。今年は、東日本大震災という大変な災害がありまして、こちらにもかなり影響されている所がありますが、実は個人的にも1月に入院してかなり大掛かりな手術をし、その後、術後の補助療法ということで、かなり強烈な投薬を受けていてその後遺症に悩んだりと、結構大変な一年でした。

病気の方はそれ以前の無理やストレスがたたったものかなと思いましたので、最近は仕事も無理せずにやっています。まあ、副作用と後遺症のほうも投薬が終わって4ヶ月経過し、多少は楽になってきた今日この頃です。

ブログも少しづつ書き始めますので、またよろしくお願いいたします。

2011年7月2日土曜日

7月のビオトープ

いやあ、暑いですね。先月は6月としては記録的な暑さとやら。原発事故の影響で節電もせねばならず、冷房が効いていなかったり、エスカレータが止まっていたりと何かと疲れる夏になりました。いろいろと忙しかったり、体調の問題があったりと、ブログの更新もなかなかできていません。読者の方には申し訳ありません。

で、ことし3鉢作ったビオトープです(水鉢園芸)ですが、まあ、そこそこ格好が付いてきましたので、近況をご紹介しましょう。

ビオトープその1

ビオトープその1は睡蓮鉢です。睡蓮を植えて、メダカを放っています。水面には、アマゾンフロッグピットという浮き草と自然発生した浮き草が浮いています。


毎朝メダカに餌を与えるのですが、この季節は浮き草の成長が激しく、年がら年中浮き草を間引きしています。水質は安定しているので、とくに水かえはせず、減ってきたら補充するようにしています。
餌の時間になると、メダカが水面近くに集まってきて、少しは可愛いですね。ベランダで日照時間が限られているせいか、睡蓮の蕾はついていません。今年こそは何とか..

ビオトープその2

ビオトープその2は、高低差のあるレイアウトで、高いほうから、シマフトイ、ナガバオモダカ、ウォーターコインが植わっています。
本来メダカを放す予定でしたが、水深が浅くなってしまったので、断念しています。

ちょっとアップにした写真です。ナガバオモダカが可憐な白い花を咲かせています。後ろに写っているのは、薬味用の紫蘇ですね。


ビオトープその3

ビオトープその3は今年最後に製作したもので、水辺の情景を再現してみました。

手前の水中にはアサザを植え、奥の陸地には、シノブとトクサを植えてみました。水陸の境には流木を配し、陸上にはミズゴケを貼りました。自分では気に入った作品です。

アサザの部分の拡大写真です。

水鉢は見るからに涼しげなのですが、やはりベランダは暑いですね。せめて見た目だけでも涼しげにして、猛暑と節電の夏を乗り切りたいと思います。


2011年6月5日日曜日

猫空に行って来ました

以前このブログでも紹介した、台北近郊のお茶の産地「猫空(マオコンと発音します)」ですが、ついに行く機会に恵まれたので、ご報告します。

今年は年明けの入院などもあって、しばらく海外出張から遠ざかっていたのですが、今回は重要な用事があり、久しぶりに台湾に行って来ました。猫空は以前から一度行ってみたかったのですが、時間的な問題や、ロープウエイの運行停止問題などで、なかなか行く機会がありませんでした。先週台北のホテルでテレビを観ていたら、ロープウエイが運行しているようでしたので、多少時間もあり、思い切って行って見ることにしました。

台北では熱心に公共交通機関の整備が行われていて、年に何回か訪問するたびに、MRT(Mass Rapid Transit, または台北捷運の新しい路線が開通しているのは驚きです。まあ、整備の速さと規模は北京には敵いませんが、それでも、数年前に比較すると利便性は確実に向上しているのは間違いありません。

今回羽田で新しいガイドブック(2010年10月発行版)を購入したのですが、そのガイドブックにも掲載されていない路線がすでに開通していて驚いたものです。左の写真は昨日駅で撮影した最新の路線図です。

台北市を囲む地域は台北県と呼ばれていましたが、昨年暮れにたくさんの周辺市が合併して、新北氏が誕生しました。いままで三重市とか中和市とか樹林市だったものが、これを機に三重区、中和区、樹林区などになりました。台北周辺地域がベッドタウン化して、多くの人口が台北市内に通勤しているのに、政治的・予算的な優先権が与えられていなかった事も合併の一因であるようです。

で、猫空ですが、路線図の右端から上のほうを通って中央を下降して右下に行く茶色のラインが見えると思いますが、これが文湖線で、右下の動物園駅のところから、猫空ロープウエー(猫空纜車)が出ています。

台北もこのあたりまで来ると山もあり、なかなか長閑な感じです。市内は車やバイクやバスが一杯で空気も悪いので、マスクをしている人もよく見かけますが、この辺ならば大丈夫そうですね。

マンションなども目立ちますので、台北へのベッドタウンにもなっているのでしょう。

猫空ロープウエイはMRTの路線の一部として運転していることもあり、料金は終点まで乗ってもNT$50(日本円で150円もしません)。日本でもスキー場などにあるゴンドラみたいな感じで、左の写真のように進んでいきます。

かなり高度がありますので、なかなか気持ちの良いものです。床が透明になっているゴンドラもあり、台数が限られているので、専用のレーンに並んで乗るようになります。

乗降できる途中駅が二箇所あり、指南宮駅で降りてみました。ここには指南宮という創建1890年の道教寺院があります。ここのサイトによると台湾道教の総本山と書いてありますね。駅前には香港の道教信者との交流開館のようなものが目立ちました。

山中の傾斜地にこのような寺院が聳えている様はまさに荘厳であります。こういった寺院がXX宮、YY宮と何箇所にも建立されています。




ここは道教寺院ではありますが、神仏混交みたいで、参道には電柱にこのような看板も見られます。南無阿弥陀仏ですね。やはり漢字の国はうれしいものがあります。

境内には植物も植えられて、たぶんお坊さんが世話をされているのだと思いますが、植栽も大変綺麗に整備されています。





指南宮駅から再度ロープウエイに乗って一駅行くと終点の猫空駅です。駅舎は結構モダンなつくりでこんな感じです。猫空駅を拠点として、私のように茶畑の茶芸館に向かうもよし、自然に親しむもよし、寺院をめぐるも良しといったところでしょうか。ロープウエイも終点付近も家族連れや若いカップルで満ち溢れていて、皆たいへん楽しそうでありました。


茶畑や茶芸館は猫空駅から少し離れたところにあり、ガイドブックに紹介されていたお目当ての店「邀月茶坊」は歩いて20分くらい掛かります。というのも着いてから判ったので、到着時にはもう汗だくでした。途中は台湾の自然を堪能できる山道(といってもバスが通れる舗装道です)を堪能しました。傾斜地にパパイヤの木が一本実をつけていました。



猫空とは言っても猫がたくさんいるわけではありません。道すがら名前の由来が書かれた看板を見つけました。それによると、この辺の渓流には川底に穴の開いた地形が特徴的で、それをあらわすことばの発音が地方の言葉で「猫空」に似ていたので、そうなったようです。(中国語の堪能な方が読んでいたら補足してください。)


で、歩くことしばし。「邀月茶坊」の門が見えてきました。
なかなか趣がありますね。門をくぐるとアプローチです。
なかなかいい感じです。店に入ると、席を決めますが、冷房の効いた室内の席と外のテラス席がありますので、ここは迷わずテラス席に。こんな感じです。



日本語は通じないので、ごにょごにょ言っていたら「広東語か?」と聞かれてしまいました。でもなんとか日本語のメニューを出してもらい、注文です。お茶と、饅頭を頼みました。普通の食事も可能です。

店の人が親切にお茶の煎れかたを伝授してくれますし、湯飲み茶碗の下にみえる紙片にも中国語で説明が書いてあります。饅頭はこんな感じです。蒸したてで、大変おいしかったのですが、一人で六個は一寸多すぎたかもしれません。
饅頭の写真はちょっとフィルタリングしてあります。

大汗をかいて山道を歩いたり、言葉が通じずに奮戦したりと、いろいろと大変でしたが、念願の自然の中での優雅なティータイムを過ごすことができました。とても楽しかったです。
猫空なのに猫はいないのかと落胆された方のために、一枚だけ写真を上げておきます。これは別の茶屋にいた猫です。こっちを向いてくれなかったので背中だけの写真でした。
 
邀月茶坊や他の茶芸館の訪問記はネットにもいといろと掲載されておりますので、もし行かれるようでしたら、そちらもご参照ください。
 

2011年5月3日火曜日

中国の屋根

私は仕事で色々な国に出かけて行ったりします。もちろん仕事がメインなので、いつも時間に追われてあまり観光するような余裕は無いのですが、それでも時間を見つけて町並みなどを見て回るのは興味深いものがあります。

中国本土ももう何度も(10回以上は行きましたかね)訪れており、この10年ほどの経済発展には驚くものがありますが、一方大都市はどこに行っても高層ビルばかり目立って、どこも同じ感じであまり面白みはありません。

ところで、昨年の10月に、中国の江蘇省にある蘇州という地方都市を訪問する機会がありました。現地の会社を訪問するためですが、ここは水の都でなかなかに風情のある街でした。 


写真に見られるように市内にはいたるところに水路があり、水路沿いの情景も非常に風情があります。下の地図を見ても判るように、蘇州は揚子江の河口近くのデルタ地帯で、すぐ近くに太湖という大きな湖があり、周辺も多くの池が点在する水の都です。太湖沿いには無錫という町もあり、上海からも近いことから工業地帯を形成しています。
大きな地図で見る

風光明媚なこともあり、古い庭園も数々あります。これらの庭園群は世界遺産にも指定されております。詳しいことはWikipediaの記事をご覧ください(リンク貼っています)。出張者にはそんなに観光する時間はありませんので、ホテルの近くにある網師園という庭園に歩いて行ってみました。ここも世界遺産のひとつです。

 日本の大名庭園のような広大さは無く、割合と細かく切った区画にそれぞれ異なる趣の庭園が造園されています。まあ、こういった建物と一体になった風景っていいですよね。
 木造瓦屋根の建築様式は古く中国から我が国に伝わったものですが、今では様式が大分異なります。そういった違いに目をやるのも興味深いことですね。この極端な屋根の反り返り具合なども日本の建築では見られません。

屋根の一番高い部分(山で言うと尾根ですね)を棟といいますが、中国の場合は、この棟が丸いんですね。これも日本と様式が異なり面白いですね。

この部分も興味深いですね。左側の壁の部分は日本では「うだつ」と呼ばれる構造体で、火事の時に隣家からの延焼を防ぐものでしょうかね。それよりも興味を引くのが、右側の棟に装着された鬼瓦のような装飾瓦ですね。これは何でしょうかね?怪獣のようにも魚のようにも見えます。
別の屋根ですが、こちらにもちょこんと乗っています。ちょっと可愛いですね。この飾り瓦が気になって見てみると、周辺地域の古めの民家の屋根の両側にも同じような装飾瓦が装着されていました。ただし、民家のものはこんなに凝ったものではなく、幾分簡略化はされています。

天平時代に建造された唐招提寺などの寺院の棟の両端には鴟尾(しび)と呼ばれる装飾瓦が装着されています。Wikipediaの記事では

寺院仏殿などによく用いられる。後漢以降、中国では大棟の両 端を強く反り上げる建築様式が見られ、これが中国などの大陸で変化して3世紀から5世紀頃に鴟尾となったと考えられている。」

とあります。

唐代末に鴟尾(しび)は魚の形に変化し、、(海に住み、よく雨を降らすインドの 空想の魚)になったとありますが、中国の屋根についているのはコレのことかも知れませんね。鯱は堂内の厨子などの屋根を飾っていたものを、織田信長が安土城の天守閣に取り付けたことから、屋外の屋根につけるようになったもののようです。いわゆるシャチホコですね。こういった魚由来の装飾を屋根に取り付けるのは火災除けの意味があったようですね。

それで、中国の屋根に取り付けてあるものは何かですが、結局よくわかりませんですね。螭吻(ちふん)、または、鴟吻(しふん)(拼音:Chīwěn、Chīwěi、Chīwěn)は龍生九子の一つ。)と呼ばれる想像上の生き物かもしれません。龍生九子というのは龍が生んだ九つの子供のようです。螭吻は何かを咥えるのが好きなので、屋根が飛ばないようにという思いが込められているのかもしれません。

2011年5月1日日曜日

このごろ

東日本大震災が尾を引いて、ブログの記事を書く気にもなれなかったのもあり、このところアップデートしてませんでした。気がつくと世間はゴールデンウイーク。季節も良くなって花粉も減ってきましたね。被災地のことや、原発事故のこと、景気の先行きや電力の供給など気がかりな事ばかりではありますが、少しずつ前に進む気持ちができてきたように思います。

ブログの方も少しずつ書き始めますので、少しお時間くださいな。

2011年3月27日日曜日

福島第一原発事故と放射線の影響

東北地方太平洋沖地震から、早いもので2週間以上が経過しました。被災地は大変な状況が続いておりますが、首都圏では一時的な物資不足や計画停電を乗り越えつつ、多少平常を取り戻しつつあります。しかし、依然多くの皆さんが気になっているのが、原発の行方と放射線の身体への影響だと思います。前回の記事で多少触れましたが、その後友人の物理学者たちからの情報なども少し増えてきましたので、改めて情報をまとめたいと思います。(ちなみに私の人脈は理学系で原子力技術とは直接のかかわりはありません)

原発周辺における放射線レベルの推移

東大の佐野研でまとめたデータが公開されています。これは公開されたデータを元に片対数グラフにプロットしたものです。
http://daisy.phys.s.u-tokyo.ac.jp/npp/

意図的か何か判りませんが測定地点が途中で変わってきているのは気になる部分ですが、原発近傍でも一時期爆発や火災を繰り返していた時期(3月15日~21日)に比較して、大分レベルが低下(正門前で数百分の一のレベル)しているのがわかります。なんとかこのまま押さえ込んで欲しいところです。決死の覚悟で消火注水作業にあたられた関係者の努力に改めて深く感謝したいと思います。

横浜における放射線レベルの測定値

横浜における放射線レベルの測定値は、横浜市環境情報局が1時間おきのデータをインターネットで公開しています。(前回の記事にも書きましたが)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/saigai/

震災前に20nGy/hちょっとだったのが、3月16日に150nGy/hを記録し、直近では50程度に落ち着いています。以前の2倍に上昇していて大丈夫なのか?といった不安をもたれる方もあると思いますが、地球上では場所によって、バックグラウンド(自然に存在するもの)の放射線量は異なり、年間の世界平均外部被曝線量が0.8mSvなので、時間当たりにならすと90nSv/hになります。GyとSvとの間には1Gy/h=0.85Sv/hのp関係があるので、年間平均外部被曝量から計算した値をGyに変換すると、90nSv/h=106nGy/hということで、現状の横浜の放射線量は、世界平均と比較しても低レベルであることがわかります。

ちなみに、中国では各都市での放射線量の値を公開していますが、どの都市をとってみても、現在の横浜よりも高い値を示しています。チベットのラサなどは平時から180nもあります。

中華人民共和国環境保護部のホームページ

ちゃんとした一時データではありませんが、こんな記事も

放射線被曝と人体への影響

東工大の中村隆司教授が3月23日に行った公演(放射線を理解するために--素人にもわかる放射線)の資料が参考になります。以前紹介したUCSBの教授の資料よりもより詳しい内容です。

http://be.nucl.ap.titech.ac.jp/RI-lecture.pdf

要約すると
1.一度に0.1Sv(=100mSv)以上の被曝をすると何らかの確定的影響(急性の原爆症のような症状)が出る可能性がある
2.年間被曝量で数mSv程度の被曝が増えても健康に影響が無いと考えてよい。

ということになります。

今後の推移

福島第一原発からの放射性物質の漏洩が現状レベルで収まれば、特に首都圏中心部においては憂慮すべきレベルではないと考えられます。問題は、原子炉が冷温安定化するかという所でしょう。ここに関しては、関係者の不断の努力に期待するしかありません。ただし、原子炉でも使用済み核燃料プールでも臨界状態(核反応が連鎖的に継続すること)ではないし、再臨界に至ったりそれが継続する可能性は意図的に操作(ほとんどテロ行為)しない限りは非常に低いと考えられます。最悪放射性物質の飛散はあるかもしれませんが、チェルノブイリのようにになりません。冷静に対処しましょう。

チェルノブイリ原発事故:黒鉛炉が爆発によってむき出しになり臨界状態が継続しながら炉心が大気中で燃焼し続けた事故。推定10トンの放射性物質が大気中に飛散したといわれる。

参考:radmonitorのページ(Google提供の放射線測定情報)

2011年3月21日月曜日

放射線被曝と人体への影響について

はじめに

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では被災地が甚大な人的・物的な被害を蒙りました。被災されました皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。

さて、首都圏住民にも今回の震災は大きな影響を与え、実際に犠牲者が発生するとともに、震災当日は帰宅難民状態、その後も発電所のダメージによる計画停電や、交通機関の混乱、そして物資不足など、実際の被災地に比べれば、天国のような状態ではありますが、混乱した状態が続いております。

また、福島第一原子力発電所の被災は関係者の献身的なご努力により小康状態を保っているものの、潜在的な放射性物質の拡散に関する脅威は払拭されたわけではなく、東日本の住民全員がその行方を見守っている状況です。

私は学部時代は物理学の専攻であったものの、原子力や放射線医学の専門家ではありません。しかしながら、自分自身も気になっておりますので、件名の「放射線被曝と人体への影響について」というテーマで自分で調べて理解した内容に関してまとめておきます。

ここでは一般的な概説を記述しますので、詳細に関してはそれぞれ参照先をご確認ください。

放射線と放射性物質

放射線とは一般に高エネルギーの電磁波や粒子線のことを指し、代表的なものとして、

α線(ヘリウム原子核が飛んでくるもの)
β線(電子が飛んでくるもの)
γ線(波長が10pmより短い電磁波)
中性子線(中性子が飛んでくるもの)

等があります。

放射線を発生する能力を放射能といい、放射能を持った物質を放射性物質といいます。

参照1:Wikipedia「放射線」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A

放射線への被曝とその定量化

人体が放射線に晒されることを被曝といいます(原爆投下の時の被爆者とは漢字が違いますので混同せぬように)。

被曝には外部から放射線に被曝する外部被曝、体内に取り込んだ放射性物質によって被曝する内部被曝、そして自然界に存在する放射線によって被曝する自然被曝があります。

どの程度の量を被曝したのかを定量化する単位としてシーベルト(Sv)という単位があります。前述の放射線の種類によって人体への影響度が異なりますので、種類によって重み付けが行われており、被曝量として大きいシーベルト値を持つ場合ほど人体への影響は大きいといえます。

被曝による身体への影響としては、短期間に多量被曝を受けた場合は組織の破壊などによる急性症状(いわゆる原爆症)が生じることがあり、場合によっては死に至ることもあります。その他の場合にはDNAの損傷とそれに起因する悪性腫瘍の発生。また、胎児や乳児への影響が考えられます。

福島第一原子力発電所の事故で放射線量として、何mSvとか何マイクロSvといった単位で数値が発表されることがありますが、この数値は実際は時間当たりのもので(何mSv/時間)といったほうが正確です。例えば、1mSv/hの環境に2時間滞在した場合の被曝量は 1mSv/h x 2h = 2mSvになります。

参照2:Wikipedia「被曝」
http://bit.ly/hGDec2

参照3:Wikipedia「シーベルト」
http://bit.ly/fcxHTW

自然被曝

原発事故による放射能漏れのような事態でなくても、放射線は我々の周囲に存在して、我々は日常被曝をしています。

放射線は宇宙線として宇宙から飛来するものもありますし、地殻から発生するものもあります。特段人工的な放射線にさらされなくとも、太古の時代から我々は常に放射線に被曝しているのです。

自然界に由来する放射線への被曝の量は、地球上の場所によって異なり、標高の高い場所では宇宙線の影響で低地よりも多く被曝しますし、例えばウラン鉱山の近くの住民はそうではない場所よりも多く被曝することになります。

自然被曝の量としては、年間1.5mSvから7mSvという情報があります(参照4)。参照4によれば標高の高いDenverの住民だと年間1mSv増し、航空乗務員だと年間で数mSv増しということになるそうです。

人生80年間生きるとすると、自然被曝の積算量としては120mSvから560mSvということになります。世界平均で自然被曝の量は年間2.4mSvなので、平均的には一生の間に192mSvの自然被曝を受けることになります。

一方で、年間2.4mSvの被曝量を時間当たりに変換すると、0.27マイクロSv/hに相当します。先日の観測結果では横浜市の放射線量は0.08マイクロSv/hでしたから、現状は自然の放射線のレベルと大差ないということになります。

参照4:「福島原発の放射能を理解する」(カリフォルニア大学のモンリオール氏による講演のスライド)
http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/zhen_zai.html

日常生活による被曝

上記の自然被曝の他に、人為的な行動や人工的な放射線による被曝も日常で経験します。これに関しては参照3に表が掲載されていますので、ご参照ください。例えば

0.1-0.3mSv  胸部X線検査
0.2mSv        東京-ニューヨーク間を飛行機で往復
4mSv           胃のX線撮影
6.9mSv        CTスキャン

例えば私の場合、年に一回人間ドックで胸部X線撮影、胃のX線撮影、CTスキャンを受け、年に一度米国に出張しますので、前述の自然被曝2.4mSvに加えて11.4mSvの被曝を受け、合計で13.8mSvの年間被曝量になります。

長期積算被曝とその影響

長期にわたって少量の被曝が積算した場合の影響としては、ガンの発生リスクの上昇があります。これは、被曝によってDNAの変成が生じることがあり、DNAの変成が細胞の変成を生じることがあり、細胞の変成がガンを生じることがあるためです。参照4によれば、1000mSvの被曝が積算した場合各種のガン発生率が0.2%程度上昇するという疫学的調査があります。

しかし、参照5に示すように現在日本におけるガンの生涯罹患率は約50%であり、被曝によるガン発生率の0.2%上昇は特に中年以降においてはリスクとしてはあまり意味をなさないのではないかと思われます。

参照5:「累積がん罹患・死亡リスク」 財団法人がん研究振興財団
http://www.fpcr.or.jp/publication/pdf/statistics2010/fig09.pdf

短期大量被曝

一方で、原爆への被爆や放射性物質の大量飛散などの事態で、短期間に大量に被曝した場合には被爆量に応じていろいろな急性症状が発生し、その量によっては死に至ることもあります。その影響に関しては参照3の表をご覧ください。抜粋すると

250mSv   白血球の減少
500mSv   リンパ球の減少
1000mSv 急性放射線障害。悪心(吐き気)、嘔吐など。水晶体混濁。
2000mSv 出血、脱毛など。5%の人が死亡する。

おおむね1000mSvを超えるとヤバイ状態で5000mSvを超えると死ぬ感じですね

ただし、現状では防護服なしで福島第一原発に入って何時間も滞在しないとこのレベルには至りません。

原発周囲で11.9mSv/hが観測されましたが、それはピーク値であり継続したものではありません。たとえ1時間継続して防護服なしで被爆したとしても11.9mSvの被爆量になります。最悪放射性物質が原発から飛散したとしても、距離の2乗に反比例して拡散していきますので、離れた場所ではもっともっと小さい値になるはずです。

少量の被爆に関して

数十mSvから100mSvの被爆があった場合、健康にどのような影響が発生するかは、残念ながら疫学的検証が取れていないようです。微小なレベルでのガン発生率の上昇はあるかもしれません。

ただし、放射性ヨウ素の体内摂取には注意が必要で、体内では甲状腺に集中するため特に若年層では甲状腺の機能障害を発生させる可能性があります。

現状に関して

2011年3月21日現在福島第一原発では放射性物質の大量放出のような最悪の事態を起こさないために関係者による最善の努力が続けられています。現状の測定データ(参照6)を見る限り、3月16日に多少の上昇を見たものの(それでも自然被爆の範囲内)、その後は落ち着いており、首都圏においては特段の危険は無いものと考えられます。

今後は参照6の測定データをモニタしつつ参照7の注意事項を参照しながら注意深く情勢を見極めることが重要と思われます。

参照6:「横浜市内における放射線量の測定状況について」
http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/saigai/

参照7:「放射性物質が体内に入ったら? 京大・渡邉教授に聞く」
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/disaster/498063/

以上とりいそぎ

ブログ中断のお詫び

今年に入ってから、入院やら手術やらでブログの更新ができていませんでした。これから、少しづつ復旧しますので、よろしくお願いいたします。

2011年1月4日火曜日

崎陽軒の特製シュウマイとひょうちゃん

横浜市民なら誰でも知っている崎陽軒のシュウマイ(シューマイではありません)。実は標準版シウマイ(昔ながらのシウマイというのですね)と中身がデラックスな特製シウマイの二種類があります(実は他にも色々あるのですが..)。シウマイにはひょうたん型をした磁器製の醤油入れがついており、これを「ひょうちゃん」といいます。ひょうちゃんができたのは戦後のことで、初代は漫画家の横山隆一氏が絵柄をつけ、ひょうちゃんの名前も横山氏が名付けたとのことです。

で、ひょうちゃんというのはどんなものかといいますと、こんなものです。
なんともとぼけた表情ですよね。

ところで、一昨年みなとみらい地区にキャッツシアターがオープンして、ミュージカル・キャッツを常設で上演しています。公演一周年を記念して、崎陽軒はキャッツバージョンのひょうちゃんを昨年の11月11日から導入しました。この件は以前から聞いていたのですが、今日たまたま購入した特製シウマイにキャッツバージョンがついていたので、うれしくなってしまいました♪

これがそうです。

ひょうたんと猫というとりあわせも不思議ですが、JJは両方とも好きなので、これは大事なコレクションにしておきましょう。このキャラクターは「ミストフェリーズ」というそうです。「ダンスとマジックが抜群で「最高の天才児」などと讃えられるクールな雄猫」だそうであります。

キャッツひょうちゃんに関する 崎陽軒の記事はここにあります。

実はキャッツをまだ見ていないのですが、そのうちにいってみましょうか...キャッツシアターのページへはここをクリックしてください。

2011年1月3日月曜日

箱根駅伝2011年復路

復路9区も取材してYouTubeにアップロードしました。ご覧ください。油断して全員の選手を撮影できませんでしたが、沿道観戦の臨場感は伝わってくると思います。

動画の貼り付けがうまくいかないのでここをクリックしてください。

YouTubeの方に編集方法に関するコメントがあったので解説しておきます。
この動画はiPhone4で撮影して、iPhone4上の動画編集ソフトiMovieで編集しました。それを、WiFi(自宅の無線LAN)経由で直接YouTubeにアップロードしましたので、パソコンは使っていません。iMovieはAppleの純正ソフトですが、標準添付ではなくAppStoreからダウンロード可能です。600円でした。

クロッカスの水栽培(その5)

さて、年明けのクロッカスの様子はこんな感じです。順調に生育しております。

2011年1月2日日曜日

箱根駅伝2011年

皆さん明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

またまた毎年恒例の箱根駅伝ですね。自宅のすぐ近くを通過するので、毎年観戦に行きます。残念ながらJJの母校は出場しませんが、いつも楽しみにしています。今年は動画を撮影してYouTubeにアップロードしてみましたので、ご覧ください。見難い場合には下記URLをご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=FtAvNIqTn7Q



毎年駅伝の観戦に出かけると、読売新聞の人(たぶん販売店)が応援旗を配っています。今年はなぜかビニール製でした。

応援旗の素材は毎年変わるようで、昨年は布製。その前は紙でした。布製のは下の写真です。