2011年3月21日月曜日

放射線被曝と人体への影響について

はじめに

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では被災地が甚大な人的・物的な被害を蒙りました。被災されました皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。

さて、首都圏住民にも今回の震災は大きな影響を与え、実際に犠牲者が発生するとともに、震災当日は帰宅難民状態、その後も発電所のダメージによる計画停電や、交通機関の混乱、そして物資不足など、実際の被災地に比べれば、天国のような状態ではありますが、混乱した状態が続いております。

また、福島第一原子力発電所の被災は関係者の献身的なご努力により小康状態を保っているものの、潜在的な放射性物質の拡散に関する脅威は払拭されたわけではなく、東日本の住民全員がその行方を見守っている状況です。

私は学部時代は物理学の専攻であったものの、原子力や放射線医学の専門家ではありません。しかしながら、自分自身も気になっておりますので、件名の「放射線被曝と人体への影響について」というテーマで自分で調べて理解した内容に関してまとめておきます。

ここでは一般的な概説を記述しますので、詳細に関してはそれぞれ参照先をご確認ください。

放射線と放射性物質

放射線とは一般に高エネルギーの電磁波や粒子線のことを指し、代表的なものとして、

α線(ヘリウム原子核が飛んでくるもの)
β線(電子が飛んでくるもの)
γ線(波長が10pmより短い電磁波)
中性子線(中性子が飛んでくるもの)

等があります。

放射線を発生する能力を放射能といい、放射能を持った物質を放射性物質といいます。

参照1:Wikipedia「放射線」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A

放射線への被曝とその定量化

人体が放射線に晒されることを被曝といいます(原爆投下の時の被爆者とは漢字が違いますので混同せぬように)。

被曝には外部から放射線に被曝する外部被曝、体内に取り込んだ放射性物質によって被曝する内部被曝、そして自然界に存在する放射線によって被曝する自然被曝があります。

どの程度の量を被曝したのかを定量化する単位としてシーベルト(Sv)という単位があります。前述の放射線の種類によって人体への影響度が異なりますので、種類によって重み付けが行われており、被曝量として大きいシーベルト値を持つ場合ほど人体への影響は大きいといえます。

被曝による身体への影響としては、短期間に多量被曝を受けた場合は組織の破壊などによる急性症状(いわゆる原爆症)が生じることがあり、場合によっては死に至ることもあります。その他の場合にはDNAの損傷とそれに起因する悪性腫瘍の発生。また、胎児や乳児への影響が考えられます。

福島第一原子力発電所の事故で放射線量として、何mSvとか何マイクロSvといった単位で数値が発表されることがありますが、この数値は実際は時間当たりのもので(何mSv/時間)といったほうが正確です。例えば、1mSv/hの環境に2時間滞在した場合の被曝量は 1mSv/h x 2h = 2mSvになります。

参照2:Wikipedia「被曝」
http://bit.ly/hGDec2

参照3:Wikipedia「シーベルト」
http://bit.ly/fcxHTW

自然被曝

原発事故による放射能漏れのような事態でなくても、放射線は我々の周囲に存在して、我々は日常被曝をしています。

放射線は宇宙線として宇宙から飛来するものもありますし、地殻から発生するものもあります。特段人工的な放射線にさらされなくとも、太古の時代から我々は常に放射線に被曝しているのです。

自然界に由来する放射線への被曝の量は、地球上の場所によって異なり、標高の高い場所では宇宙線の影響で低地よりも多く被曝しますし、例えばウラン鉱山の近くの住民はそうではない場所よりも多く被曝することになります。

自然被曝の量としては、年間1.5mSvから7mSvという情報があります(参照4)。参照4によれば標高の高いDenverの住民だと年間1mSv増し、航空乗務員だと年間で数mSv増しということになるそうです。

人生80年間生きるとすると、自然被曝の積算量としては120mSvから560mSvということになります。世界平均で自然被曝の量は年間2.4mSvなので、平均的には一生の間に192mSvの自然被曝を受けることになります。

一方で、年間2.4mSvの被曝量を時間当たりに変換すると、0.27マイクロSv/hに相当します。先日の観測結果では横浜市の放射線量は0.08マイクロSv/hでしたから、現状は自然の放射線のレベルと大差ないということになります。

参照4:「福島原発の放射能を理解する」(カリフォルニア大学のモンリオール氏による講演のスライド)
http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/zhen_zai.html

日常生活による被曝

上記の自然被曝の他に、人為的な行動や人工的な放射線による被曝も日常で経験します。これに関しては参照3に表が掲載されていますので、ご参照ください。例えば

0.1-0.3mSv  胸部X線検査
0.2mSv        東京-ニューヨーク間を飛行機で往復
4mSv           胃のX線撮影
6.9mSv        CTスキャン

例えば私の場合、年に一回人間ドックで胸部X線撮影、胃のX線撮影、CTスキャンを受け、年に一度米国に出張しますので、前述の自然被曝2.4mSvに加えて11.4mSvの被曝を受け、合計で13.8mSvの年間被曝量になります。

長期積算被曝とその影響

長期にわたって少量の被曝が積算した場合の影響としては、ガンの発生リスクの上昇があります。これは、被曝によってDNAの変成が生じることがあり、DNAの変成が細胞の変成を生じることがあり、細胞の変成がガンを生じることがあるためです。参照4によれば、1000mSvの被曝が積算した場合各種のガン発生率が0.2%程度上昇するという疫学的調査があります。

しかし、参照5に示すように現在日本におけるガンの生涯罹患率は約50%であり、被曝によるガン発生率の0.2%上昇は特に中年以降においてはリスクとしてはあまり意味をなさないのではないかと思われます。

参照5:「累積がん罹患・死亡リスク」 財団法人がん研究振興財団
http://www.fpcr.or.jp/publication/pdf/statistics2010/fig09.pdf

短期大量被曝

一方で、原爆への被爆や放射性物質の大量飛散などの事態で、短期間に大量に被曝した場合には被爆量に応じていろいろな急性症状が発生し、その量によっては死に至ることもあります。その影響に関しては参照3の表をご覧ください。抜粋すると

250mSv   白血球の減少
500mSv   リンパ球の減少
1000mSv 急性放射線障害。悪心(吐き気)、嘔吐など。水晶体混濁。
2000mSv 出血、脱毛など。5%の人が死亡する。

おおむね1000mSvを超えるとヤバイ状態で5000mSvを超えると死ぬ感じですね

ただし、現状では防護服なしで福島第一原発に入って何時間も滞在しないとこのレベルには至りません。

原発周囲で11.9mSv/hが観測されましたが、それはピーク値であり継続したものではありません。たとえ1時間継続して防護服なしで被爆したとしても11.9mSvの被爆量になります。最悪放射性物質が原発から飛散したとしても、距離の2乗に反比例して拡散していきますので、離れた場所ではもっともっと小さい値になるはずです。

少量の被爆に関して

数十mSvから100mSvの被爆があった場合、健康にどのような影響が発生するかは、残念ながら疫学的検証が取れていないようです。微小なレベルでのガン発生率の上昇はあるかもしれません。

ただし、放射性ヨウ素の体内摂取には注意が必要で、体内では甲状腺に集中するため特に若年層では甲状腺の機能障害を発生させる可能性があります。

現状に関して

2011年3月21日現在福島第一原発では放射性物質の大量放出のような最悪の事態を起こさないために関係者による最善の努力が続けられています。現状の測定データ(参照6)を見る限り、3月16日に多少の上昇を見たものの(それでも自然被爆の範囲内)、その後は落ち着いており、首都圏においては特段の危険は無いものと考えられます。

今後は参照6の測定データをモニタしつつ参照7の注意事項を参照しながら注意深く情勢を見極めることが重要と思われます。

参照6:「横浜市内における放射線量の測定状況について」
http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/saigai/

参照7:「放射性物質が体内に入ったら? 京大・渡邉教授に聞く」
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/disaster/498063/

以上とりいそぎ

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