私の住むマンションでは、細則を守ればペットを飼うことが可能です。犬猫ならば体長50cm(胸骨から坐骨端まで)以下で体重10Kgまでのものを二匹まで飼育可能です。届け出が必要で、うちの猫(ミーちゃん)も当然届け出をしています。猫は出歩かないしそれほど鳴き声も上げないので、どの家で飼っているのかわかりませんが、犬の方は吠えたりするし、 散歩に連れ出したりもするので、共有部分などで見かけることが良くあります。
私も子供の頃に犬を飼ったことがあるし、懐いた時のかわいさはよくわかっていますが、成人してからはすっかり猫しか飼わなくなってしまい、犬を散歩している人たちを、どちらかというと冷ややかな目で見ています。と、いうのも、建物周囲におしっこをかけるし(糞の方は飼い主が持ち帰りますが、おしっこの方はペットボトルで水をかけて薄める人も見かけるものの、やはり匂いやしみが残ります。)、飼い主同士の犬自慢会話が耳に入ってくると、なんだかばかばかしい感じがします。犬の方もかなり手入れがされた、華奢でお利口な小型犬で、昔自分で飼っていたころとは別世界のような感じです。
ところで、ネットで昔の写真を探していたら、こんなものを見つけました。
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図1:大八車を曳く犬 |
江波信國という横浜に住んでいた写真家が撮影したもののだそうで、明治時代の風俗が分かる写真を多く残しています。
ここのサイトに「明治時代の日本の仕事風景」として興味深い写真が60枚乗っているうちの1枚です。犬が二頭で大八車を曳いていますね。写真はモノクロに彩色したものでしょう。大八車には伐採してきたような丸太が何本も積まれており、それを何と犬が曳いています。
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図2:空の大八車 |
大八車は上の写真のような構造をしており、通常は左上の井型の中に人間が入って引くものです。図1では人間が曳くために入る井型の部分までみっしりと丸太が覆っており、これは真剣に犬に曳かせる設定としか見えません。決して木こりの運搬作業にお供するお散歩犬ではなさそうです。
明治以前には一般的に牛馬が使役用として使われていたので、図3のような姿はまあ分かりますが、犬が荷車を曳いているのはなんだか珍しいですね。
ここのサイトには使役される牛馬の写真(図1、3を含む)がいくつか上げられています。
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図3:大八車を曳く牛 |
日本でいつごろから使役犬を使うようになったのか、ちょっと調べてみたら、
ここのサイトにいろいろと記事が載っていました。まず、もともとヨーロッパではベルギーをはじめとして使役犬を使う文化があり、それが明治以降日本に伝わったというルート。
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図4:ベルギーのミルク運搬犬 |
ベルギーのミルク運搬犬と言えば、かの有名なフランダースの犬がありますが、この話はあまりに悲しいので、私は好きではありません。
もう一つは、幕末以降盛んになった蝦夷地開拓により、樺太アイヌなどの北方民族が使っていた犬ぞりの文化も日本に入ってきたようです。
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図5:大泊(樺太)の荷役犬 |
ここのサイトに犬ぞりについていろいろと記事が載っています。また、精悍な犬ぞり用の犬も各種写真がありますね。私は下の写真の犬種が気に入りました。
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図6:そり犬サモエド |
サモエドって言うのですか、もこもこですね。ちょっともふもふしてみたいです。
で、その後、日本でも各地で犬が荷役用や軍用などに使われるようになって行ったようです。まあ、どこまで真剣に荷役に使ったのかは分かりません。図7の例などは半分は話題作り(=宣伝)のためのような感じも受けますが、図8などはかなりガチな印象を受けます。図8は貨物駅のように見えますね。貨物駅で貨車から荷下ろしをして、反対側につけた犬車に載せ替えて目的地まで運んだのでしょうかね?
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図7:ビア樽を運ぶシェパード |
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図8:中部日本の輓曳(ばんえい)犬(昭和9年) |
使役犬のもう一つの流れは軍用犬ですね。どの程度役に立ったのかわかりませんが、戦場にも犬たちが出征していきました。
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図9:兵士と軍用犬 |
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図10:防毒面を装着した軍用犬(毒マスクをかけて脚側停座) |
図10はドイツの写真のようです。第一次世界大戦では毒ガス戦が行われましたので、軍用犬にもこういった装備が適用されたのでしょう。ご苦労なことです。毒ガスに限らず戦場で命を落とした軍用犬たちも少なくなかったものと思われます。
そういえば、昨年海外出張したときの機内で、アフガニスタンの戦場でハンドラーを亡くしてPTSDになってしまった軍用犬と心の病を抱えた少年(ハンドラーの弟)との交流を描く
映画「MAX」を少し見ていました(実は眠くて途中で眠ってしまったのですが)。犬と言えどもPTSDになるんだなぁ。犬の演技も素晴らしかった。
働く犬たちの事をいろいろと書きましたが、今日も当マンションの「お犬様」たちは従者を従えて優雅にお散歩をなさっていることと思われます。
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