2018年8月18日土曜日

愛の戦士レインボーマンと提婆達多

 その昔、ヒーローもの特撮テレビ番組で「レインボーマン」というタイトルのものを放映していました(関東地区はNETで10ch)。Wikipediaによると、「1972年(昭和47年)10月6日から1973年(昭和48年)9月28日までNET系で毎週金曜日19:30 - 20:00に全52話が放送された。」とあります。このころ自分は中学生だったのでこんな番組を真剣に見る年齢でもなかったのですが、なぜか漫然と見ていた記憶はあります。
レインボーマンは他のヒーローものとは異なる独自の設定だったので、なぜか印象に残っています。詳細はWikipediaの記事を読んでもらえばわかるのですが、以下、簡単に紹介しましょう。(~はWikipediaからの引用)

~アマチュアレスリングで名をはせた高校生・ヤマトタケシは小学生のころ、妹を自分の不注意で交通事故に遭わせ、脚に障害を負わせてしまう。その治療費を稼ぐため、格闘技にさらに磨きをかけプロレスラーとなり、有名になって金持ちになるべく、インドの山奥に住む奇蹟の聖者「ダイバ・ダッタ」のもとへと旅立った。折しも第三次印パ戦争の真っ只中であり、負傷したタケシだったが、年老いたダイバはタケシに長年夢に見た伝説の七色の戦士、「レインボーマン」の素質を見出し、タケシを弟子に迎える~

という設定で

レインボーマンは必要とする能力に合わせて、七曜にちなむ7種類の姿に変化(へんげ)し、それぞれの姿にちなんだ超能力を発揮する~

ということで5人それぞれの特性で戦う戦隊物とは違い、ヒーロー自身が7種類に変化して異なる能力を発揮するようであります。


 上の写真が7つの変化のようです。

一方でレインボーマンが戦う相手は「死ね死ね団」という悪の組織で、日本人及び日本国壊滅を狙っています。

上の写真左は変身するときの呪文「阿耨多羅三藐三菩提(あのくたらさんみゃくさんぼだい)」を唱える主人公のヤマトタケシ(結構イケメンだ)。右が死ね死ね団とそのリーダー・ミスターK(ちなみに平田昭彦が演じている)です。

戦争中に被占領地で日本軍の虐待を受け、以後日本と日本人に徹底的に憎悪を抱くようになったと自称するリーダーの下、日本の解体と日本人殲滅を目的として結成された組織である~

挿入歌「死ね死ね団のテーマ」というのがあり、日本人への憎悪に溢れる相当ヤバい歌詞であります。

死ね死ね 死ね死ね死ね死ね
死んじまえ
きいろいぶたを やっつけろ
金で心を 汚してしまえ
死ね死ね死ね死ね
日本人はじゃまっけだ
きいろい日本ぶっつぶせ
死ね死ね死ね 死ね死ね死ね
世界の地図から消しちまえ死ね
(以下略)

Youtubeに上がっているので聴くこともできますが.. この歌詞のせいもあり、このドラマの地上波での再放送は今では行われないようです。 


レインボーマンに現れた仏教的要素


ヤマトタケシの師であるダイバ・ダッタは、仏典に登場する提婆達多から来ていると思われます。提婆達多は釈迦のいとこにあたり、釈迦十大弟子の一人である阿難尊者の兄であります。提婆達多はもともと釈迦の弟子であったのですが、その後、より厳しい戒律を掲げて分派し、また釈迦を殺そうとしたことから無間地獄に落ちたといわれています。

ところが一方で、妙法蓮華経(いわゆる法華経)には提婆達多品という巻があり、それによれば、提婆達多は過去生では阿私仙という名で釈迦の過去生の師匠に当たり、釈迦に法華経を伝えたこと、そして遠い未来に天王如来として仏になるだろうという事が書かれているようです。 仏門にないものには理解が難しいのですが、悟りに至るには善悪両方が必要であり、また悪人も成仏できるという事を説いているようです。

ヤマトタケシが変身の際に唱える呪文、阿耨多羅三藐三菩提も仏教用語で梵語(サンスクリット語)で、意味としては「完全な理解」あるいは「生死の迷いを去って一切の心理を正しく平等に悟ること」また「仏の完全な悟り」を意味するようです。

他のヒーローものの設定とはかなり異なるのは「戦時中の他国人からの恨み」や「仏教的な背景」に基づく設定があったせいと思われます。この他にもレインボーマンは疲れると無防備なまま「ヨガの眠り」に5時間入らないといけないとか、死ね死ね団が悪事を働くために「御多福会」という新興宗教を設立したりと、他のヒーローものにはない魅力的な設定には事欠かきません。


原作者 川内康範氏について

 

こういった背景には原作者である川内 康範(かわうち こうはん、1920年(大正9年)2月26日 - 2008年(平成20年)4月6日)の経歴が大きく影響しています。川内康範は日蓮宗のお寺に生まれその後映画界入り、戦時中は横須賀海兵団に召集(外地まだ行ったのかは不明)。戦後は太平洋戦争中の戦没者の遺骨引き上げ運動を開始し、10年間続けたそうです。

同氏は作詞家としても多くの歌謡曲を残しており、「君こそわが命」「伊勢崎町ブルース」「おふくろさん」 「にっぽん昔ばなし」など数々の名曲を手掛けています。また映画原作や著作も多くあります。

ドラマ原作者としては何といっても「月光仮面」が代表作でしょう。この月光仮面も仏教の月光菩薩から来ているネーミングだそうです。

『月光仮面』のキャッチフレーズは「憎むな、殺すな、赦しましょう」であるが、これには川内が仏寺に生まれ育ったことが影響していると自ら語っている~

レインボーマンの一種独特な背景は川内氏の世界観や日蓮宗宗徒としての考え方が深く反映されていたものと考えられます。


おわりに



地上波で再放送されなくなったレインボーマンですが、一度CSで再放送を見かけたことがあります。死ね死ね団メンバーとレインボーマンが死力を尽くして戦うシーンがあったのですが、ロケ地はまだ再開発される前の「台場」でした....そう、台場だったのです。

レインボーマンの放映終了の20年後に東京の芝浦と台場を結ぶ吊り橋が竣工しました。橋の名前はなぜかレインボーブリッジです。こういうことも何かの偶然なのか、川内氏の霊的能力だったのか今となっては分かりません。



では最後に川内氏の作詞であるレインボーマンのテーマソングを。





 

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