前回は本郷の盲長屋の話を書きましたが、その盲長屋のすぐ近く、本郷三丁目の交差点の所に「かねやす」という店があります。今日はその「かねやす」のお話です。
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図1現代の本郷三丁目 |
図1は現代の本郷三丁目付近の地図です。前回も掲載しました。地図の下の方を東西に走っているのが今の春日通り(江戸当時は本富士通りと呼ばれていたようです。)で東に行くと坂を下って湯島を通り御徒町に出ます。地図の左の方を上下に走っているのが本郷通りまたは国道17号線(江戸当時の中山道) でその交差点が、今でいう本郷三丁目の交差点です。それで、交差点の南西の角に「かねやす」と書かれているのが分かると思います。
ここに「かねやす」という雑貨店があったのですが、最近はいつ行ってもシャッターが閉まっており、店は閉店してしまったのかもしれません。「かねやす」は400年以上もの歴史があり、タイトルにある川柳にも詠まれています。
いわれはWikipediaにありますので
リンクを張っておきます。
まあ、簡単に要約すると、その昔京都に兼康祐悦(かねやすゆうえつ)という名前の歯医者がおり、徳川家康の江戸入府に伴い、江戸についてきたそうです。元禄年間になって「乳香散」という名前の歯磨き粉を販売したが、それが人気を博し、ここ本郷三丁目の地に「兼安」という小間物店を開いたそうです。さらに「乳香散」が売れまくったので、のれん分けをして別の「兼安」が芝に開店したそうです。後に本郷の店と芝の店が本家争いをした時に、時の町奉行である大岡忠助が、「芝は「兼安」本郷は「かねやす」を名乗るように」との大岡裁きで本郷の店はひらがなの「かねやす」になったそうです。
加賀鳶として加賀金沢藩の藩邸に出入りしていた、我がご先祖の巳之助はこの「かねやす」で歯磨き粉でも買っていたかもしれないと思うと不思議な感じです。買い物はしていなかったかも知れないですが、加賀鳶詰所から目と鼻の先にある有名な小間物屋だったので、知らなかったことはないでしょう。
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図2かねやすのプレート |
で、その後..(Wikipediaの記事を引用)..
「享保15年、大火事が起こり、復興する際、大岡忠相は本郷の「かねやす」があったあたりから南側の建物には塗屋・
土蔵造りを奨励し、
屋根は
茅葺きを禁じ、
瓦で葺くことを許した。このため、「かねやす」が江戸の北限として認識されるようになり、「本郷も かねやすまでは 江戸のうち」の川柳が生まれた。」とのことであります。
昨日、用事があって本郷三丁目まで出かけたのですが、 「かねやす」は現在は7階建てのかねやすビルになっています。1階には「かねやす」の店はあるものの、シャッターが閉まっていました。でもビルの端の所にはしっかりとこの川柳といわれの書かれたプレートが取り付けられていました。
大岡越前守忠助の命により、「かねやす」よりも南側では茅葺屋根が禁じられたということですが、板葺は許されたのでしょうかね?すべて瓦葺の建物ばかりだと江戸の町もかなり壮観だったのでしょう。実際残された幕末の写真を見ると、特に大名屋敷街は壮観だったようです。
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図3幕末の大名屋敷街(愛宕山から浜御殿方面 |
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図3は幕末に
フェリーチェ・ベアトという写真家が撮影したもので、愛宕山から東方向の写真です。遠くに見える森は浜御殿(今は浜離宮恩賜庭園と呼ばれていますが..)手前に立派な大名屋敷が並んでいますね。当時の地図を見ると、手前の塀の向こうは左側が御老中越後長岡藩牧野備前守様の下屋敷。右の方にあるのが(写真からははみ出しているかもしれませんが)大和小泉藩片桐石見守様の上屋敷のようです。その奥が伊予松山藩の松平隠岐守様の上屋敷。そんな感じで浜御殿までお屋敷が延々と続きます。幕末に江戸を訪れた海外の人々も、江戸のスケールに相当驚いたことだと思います。
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図4愛宕山からのパノラマ写真 |
実は図3の写真はパノラマ写真になっていて全体像が図4です。ちょっと細かくて見ずらいので中央部分だけを取り出したのですが。図4には果てしなく広がるかに見える壮大な大名屋敷群が見て取れると思います。左の奥の方に築地本願寺の本堂も映っています。
ということで今日は江戸の町に思いを馳せてみました。
PS.投稿後本件に関連する画像を追加で見つけたので上げておきます。
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図5本郷カネヤス店頭の賑わい |
図5は「かねやす」が集客のために作った双六を兼ねたチラシの一部です。宣伝用なので、当時本当にこんなに賑わっていたのか真相は不明ですが..洋傘を差したご婦人の姿や上の方に西洋式の建物が描かれたりしているので、明治期のものと推定されます。「大うり多し(大売出し)」と書いてあるのが何だか微笑ましいです。
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図6乳香散の引き札(ちらし) |
図6は「かねやす」の人気商品である乳香散のチラシですね。「口中一切之薬」と書いてあるのが分かります。
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