2009年10月3日土曜日

猫は凶暴か? -(副題)猫の漢字と二種類のけものへん-

ネコは漢字で「猫」と書きますが、台湾に行くと繁体字中国語で「貓」と書きます。イヌは漢字で「犬」ですが、中国では「狗」、台湾の繁体字中国語でも「狗」と書きます。

イヌに関していえば、昔は中国でも大型のイヌを「犬」、小型のものを「狗」と区別して表現していたようですが、現代の中国語ではどちらも「狗」になっています。日本ではこの漢字はイヌには使わず、「天狗」とか「走狗」くらいにしか使いませんよね。(羊頭狗肉という言葉はありますが)

ここで不思議に思うのが、「猫」の繁体字の場合「けものへん」が「豸」になっているのに、イヌの方は「狗」の「けものへん」が繁体字でも「犭」のままである点です。

先日、漢字に詳しい中国人(実は意外と少ないのですが)をつかまえて、漢字の話をした時に、けものへんについても尋ねてみたのですが、この人いわく、「けものへんにはもともと二種類あって、イヌのけものへんと、ネコのけものへんは違うんですよ。」とのことでした。

で調査してみますと、普通のけものへん「犭」は確かにイヌから来ているようですね。リンクのほうに詳しい解説が掲載されています。この解説によると、「犭」はイヌを横から見た様子を表しているそうです。

一方で、ネコのほうのけものへん「豸」は正しくは「むじなへん」と呼ばれるそうです。このへんはネコやトラが口をモグモグさせながら背を伸ばして獲物の様子をのぞいている様子を表した表形文字です。ここを見ると絵が出ています。こっちの方は単に動物を横に見た形ではなく、「口を開けて獲物に襲いかかろうとしている」動物を横から見た様子を表しているということになります。漢字には本字、正字、俗字、略字、異体字、簡体字、日本の新字体などいろんな書き方があり、「猫」や「狸」などに見られるように現代では本来の「豸」が「犭」に移行している例も多いのですが、「豹」だけは今でも「むじなへん」のままですね。

「豸」の意味としては、単なる獣ではなく、鋭い爪をもっていたり攻撃性が高い獰猛な様子を表すようです。ちなみに「豸」の「むじなへん」をつかう漢字としては、下記のようなものがあります。

  「豹」:ヒョウ
  「貂」:テン
  「貉」:ムジナ
  「貓」:ネコ
  「貍」:タヌキ

と、言ったところです。ちなみに貍は現代のタヌキではなく、人家近くに生息する中型の哺乳類全般を指していたとの事です。ムジナ(ムジナというのはアナグマ、タヌキ、ハクビシンなどを混同して指している言葉のようです)が獰猛なのかどうかは判りませんが、古代中国の漢字を考えた人たちの区分では、ネコはイヌを始めとする一般の動物ではなく、猛獣のくくりに入るということになります。

と、いうことで、猫はやはり凶暴なのかな?といった感じはします。

今日はすこし理屈っぽくなっちゃいましたね。次回はもう少し読みやすい記事にしましょう。

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