2009年10月25日日曜日

国立新美術館と歩兵第三聯隊

芸術の秋という訳ではありませんが、このところ美術ネタが続いていますね。JJもちょっと藝術づいておりまして、昨日は上野の東京国立博物館で開催中の「皇室の名宝展」を見に行って、その後、六本木の国立新美術館の公募展(第63回二紀展)に行きました。後者のほうはお付き合いです。「皇室の名宝展」は普段展示されない作品、特に最近評価の上がってきた伊藤若冲の動植綵絵を見に行ったのですが、この件は後日書くとして、今日は国立新美術館の建物の由来を書きたいと思います。


国立新美術館は2007年の1月21日に開館した新しい美術館で、開放的で明るい建物は展示スペース14,000㎡を誇り、日本で一番大きい面積となっています。ここは美術館といっても、収蔵品は持たず、公募展と企画展のみに特化しています。

ここができてから、公募展は従来の東京都美術館(上野)からだいぶ引っ越してきました。ので、最近は東京都美術館(通称トビカン)に行く機会はめっきり減りました。トビカンは昭和50年に立て替えられました。戦前に立てられた以前の建物に比べるとだいぶ広くはなったのですが、それでも公募展の主催者側からは「狭い」との声が上がり、国立新美術館の建設につながったようです。

国立新美術館は、ガラス張りのファサードの内側は明るい吹き抜けの空間になっており、板張りの床もとても心地よいですね。気軽にお茶を飲めるカフェやレストラン、地下には充実したミュージアムショップもあります。吹き抜けの奥が展示室になっており、1階から3階まであります。また展示室の外側には、屋外展示スペースもあり、彫刻など重量物を展示できるようになっています。先ごろ亡くなった黒川紀章 氏の設計との事ですね。

この美術館は場所もいいので、休日に行くと老若男女多くの美術ファンで賑っています。日本における公募点のあり方や、箱物行政に対する批判など、色々あるでしょうが、これだけ来場者が集まってくるのであれば、人々の美術に関する関心を高めるという点では十分機能しているのではないかと思いますね。

ところで、地価も利用効率も高く空き地がほとんど存在しない都内において、何か新しい建築物を建てる場合は、埋立地を除くと必ず何かの跡地ということになります。この国立新美術館の立っている場所も、元は東京大学の物性研究所と生産技術研究所があった場所です。その前をたどれば、大日本帝国陸軍の歩兵第三聯隊の兵舎でした。

歩兵第三聯隊といえば、戦前は麻布の歩三(昔はこの辺一帯は総称として麻布と呼ばれていました。大東京35区でも麻布区でしたもんね。)とも呼ばれていましたが、第一師団の揮下で、昭和11年の二・二六事件の際には、多くの将兵がここから反乱軍として出動しました。もっとも下士官・兵のほとんどは将校の命令に従っただけで、何が何だかわからなかったのではなかったかと思います。


国立新美術館の吹き抜けには、歩兵第三聯隊時代の兵舎の模型が置かれています。同聯隊は明治3年に編成された歴史を持ち、兵舎のほうは関東大震災で損壊した煉瓦建築を、震災復興事業の一環として再建し、昭和3年に落成した我が国初の近代的鉄筋コンクリート作りの兵舎だったということで、社)日本建築学会からは当時の文化庁長官及び東大総長に対して保存を望む要望も出されました。

実は、JJの父親(とっくに亡くなりましたが)は昭和17年の1月に陸軍に召集されましたが、本籍地が東京府だったので、この歩兵第三聯隊で新兵としての訓練を受けました。生前この兵舎に関する話を聞いた覚えはありませんでしたが、何か縁を感じます。

残念ながら歩兵第三聯隊の建物は取り壊されてしまいました。まあ、もとが兵舎ですので、今風の美術館に改装ということも無理があったのでしょうね。代わりに兵舎の一部は敷地内に保存されています。建物の切り口の部分は壁で塞いで、別館として公開されているようです。

江戸時代までさかのぼると、この土地は伊予宇和島藩・伊達家(十万石)の藩邸だったようです。(仙台藩の伊達氏の分家にあたります)

ちなみに近くの東京ミッドタウンのある場所は、以前は防衛庁(市ヶ谷に移転)でしたが、その前は、帝国陸軍の歩兵第一聯隊でした。戦後米軍に接収されていた時期もありましたが、この辺は軍事施設が多かったようですね。こちらの方は江戸時代までさかのぼると長門萩藩(長州藩)・毛利家(36万9千石)の中屋敷及び下屋敷だったようです。隣接する檜町公園の日本庭園は当時の名残ですね。

ちなみに冒頭で言及しました「皇室の至宝展」での目玉展示の一つであった、狩野永徳の唐獅子図屏風は、毛利家の伝来品(秀吉が毛利家に贈ったと言われる)で、最後の藩主であった毛利元徳公から皇室に献上されたものだそうです。

なぜか話はグルっとつながってきましたね。

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